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食べる順番はダイエットに効果があるのか

健康科学

 

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「野菜から先に食べると太りにくい」——いわゆる食べる順番ダイエットを耳にしたことがある方は多いと思います。食事の最初に野菜や食物繊維を摂ることで食後の血糖値の上昇を緩やかにし、体重管理に役立てようという食事法です。本当に効果はあるのでしょうか。研究でわかっていることと、その限界を整理します。

野菜を先に食べると血糖値はどれくらい抑えられる?

米ウェイル コーネル医科大学の研究チームは2015年、2型糖尿病の患者11名を対象に「食べる順番」の違いを比べました(Diabetes Care 掲載)。
野菜・タンパク質を先に食べてから炭水化物を摂った場合、炭水化物を先に食べた場合と比べて、食後血糖値は30分後に29%、60分後に37%、120分後に17%それぞれ低下しました。インスリン値も約31〜50%抑えられています。

日本でも関西電力医学研究所などのクロスオーバー試験で、野菜を先に食べることで食後血糖値とインスリン値の上昇が20〜30%抑えられることが確認されています。

体重やカロリーは本当に減るのか?

関西電力医学研究所らが2016〜2017年に行った保健指導の研究では、食べる順番を意識した群(18名)は従来の指導群(11名)と比べて、6ヵ月後の体重が約1.5kg多く減少し、1日の食事摂取量も約200kcal減りました。

野菜を先に摂ることでよく噛む習慣が生まれ、満腹中枢が早く刺激されるためと考えられています。

ただし、空腹時血糖値やHbA1cの差ははっきりせず、「血糖コントロールの改善」よりも「食べる量が自然に減る」ことが主な働きである可能性があります。

なぜ効くのか? 食物繊維とGLP-1のしくみ

食べる順番が血糖値に影響する理由は、主に2つあります。

第一に、野菜の食物繊維が糖質・脂質の消化吸収を物理的に遅らせます。

第二に、タンパク質・脂質を先に摂ると、消化管ホルモンのGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の分泌が促され、胃の中の食べ物が出ていくのを遅らせてインスリン分泌を助けます。

このGLP-1の働きは、糖尿病治療薬であるα-グルコシダーゼ阻害薬と似ており、食後の高血糖を防ぐ医学的な根拠があります。

2025年版の食事摂取基準で「ベジファースト」が削除された理由

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、ベジファーストに関する記述が削除されました。主な理由は次の4点です。

  • 介入の複合性:有名な研究の多くは「野菜先食べ」単独の効果ではなく、よく噛む・食事教育なども同時に行った複合的な介入だった
  • 対象の限定性:ほとんどの研究が2型糖尿病患者を対象としており、健康な人への一般化は不確か
  • 実験条件の非現実性:野菜を食べてから10〜15分の間隔を置いてから米を食べるという、日常では再現しにくい方法が使われていた
  • 国際的な不採用:海外の糖尿病・肥満ガイドラインにはベジファーストの記述がなく、国際的な合意が得られていない

削除は「無効だから」ではなく、「順番だけで痩せる」という過度な期待を防ぐための、科学的に厳密な判断です。

最新トレンド:プロテインファーストという選択肢

近年は「プロテインファースト(タンパク質先食べ)」も注目されています。

肉・魚・卵などのタンパク質を先に摂ることでGLP-1の分泌がより強く促され、満腹感を得やすくなると考えられています。

注意点

食べる順番は、あくまで補助的なツールです。
食後血糖値を抑える効果は実証されていますが、総カロリー摂取量をコントロールしないまま「順番だけで痩せる」のは期待しすぎです。

また、血糖値の低下効果を示した研究のほとんどは2型糖尿病患者を対象としており、健康な人にそのまま当てはまるかどうかは不確かです。
一方で、糖尿病リスクがある人や食後の血糖スパイクが気になる人には、特に有効な習慣と言えます。

※この記事は情報提供を目的としたもので、医師の診断・指導に代わるものではありません。

まとめ

  • ウェイル コーネル医科大学の研究(2015年, Diabetes Care)では、野菜・タンパク質を先に食べると食後60分の血糖値が37%低下しました(対象:2型糖尿病患者11名)
  • 関西電力医学研究所の保健指導研究(6ヵ月間)では、食べる順番を意識した群が従来群より約1.5kg多く減量し、1日摂取量が約200kcal減少しました
  • 2025年版食事摂取基準でベジファーストの推奨が削除されました。研究のほとんどが2型糖尿病患者対象で健康な人への一般化に限界があり、複合介入のため単独効果が不明なためです
  • 効果のメカニズムは、食物繊維による消化吸収の遅延と、タンパク質・脂質によるGLP-1ホルモン分泌の促進の2つです
  • 食べる順番は補助ツールであり、総カロリー摂取量のコントロールなしに「順番だけで痩せる」効果は期待できません
参考文献 (6件)
  1. Food Order Has a Significant Impact on Postprandial Glucose and Insulin Levels (Diabetes Care 2015, Weill Cornell)
  2. 「食べる順番」に重点をおいて食事をすると減量効果が大きい(糖尿病ネットワーク)
  3. 食べる順番を工夫して食後高血糖を改善(糖尿病ネットワーク 2015)
  4. 野菜から食べる「食べる順番」の効果(農畜産業振興機構)
  5. ベジファーストが食事摂取基準から削除されたエビデンスを解説(産業保健新聞)
  6. 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(厚生労働省)

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